アトリエ 訪問

 


昨年と今年の2年連続「健康をめざすアート公募展」で優秀賞を受賞したカモタオユコさん、その産みの親/田中裕一さんに勤務先の春陽苑でエピソードを語っていただきました。

カモタオユコさん

カモタオユコ( Y・Rさん と M・Sさん)と一緒

☆カモタオユコさんについてのQ&A


◇カモタオユコさんについてのQ&A
Meets Gallery (以後Q):最初の質問です。「健康をめざすアート公募展」2年連続で優秀賞を受賞カモタオユコさんは、どのように生まれたのですか?
田中裕一さん(以後A):昨年「健康をめざすアート公募展」で第1回優秀賞を受賞した初代カモタオユコは、勤務先である介護老人保健施設 春陽苑で私が指導する臨床美術講座に参加し、受賞作「二人で描く線と色の抽象画」を制作した利用者様6名の頭文字から名付けました。ですが、第2回の今年は2作品応募し、受賞作「バイタリティ」は6名、「二人で描く線と色の抽象画」は12名によって制作、カモタオユコは計18名になりました。

Q:2年連続で優秀賞を受賞しましたが、2作品応募の動機は?
A:昨年はアート活動を始めて間もない頃だったので、参加する利用者様が少なかったですが、1年以上活動を継続してきたお陰でたくさんの方々に参加していただけるようになり、イメージの違う2作品を応募することにしました。

Q:今年の受賞作「バイタリティ」は、どんな技法を用いたのですか?
A:アクリル絵具を専用の溶剤で薄め、コップに何層か重ねてキャンバスの上にひっくり返して描く「フルイドアート」と言われるジャンルになります。SNSで私が見つけ、挑むことに決めました。制作時はアクリル絵具に流動性があるので、キャンバスを参加者6名全員で動かしながら絵具を全体に行き渡らせ、どの角度から観ても白い素の部分なくし、作品の力を感じてもらうようにしました。

Q:制作日数はどのくらいでしたか?
A:最初に6名全員に色を選んでもらったので、皆で描くのに2時間弱、乾かすのに3日ぐらいかかり、その上にコーティングをしたので合わせて計1週間ぐらいでしたが、ある意味一発勝負でした。

Q:暖色系の力強い作品でタイトルは「バイタリティ」の制作意図は?
A:2回目の「健康をめざす公募展」ということで、改めて「健康の表現」って何だろうって考えたのですが、「元気」の出る色使いが良いかなと思い至り、赤や黄の暖色系を使いました。それで、出来上がった作品から何を感じてもらえるかなと考えたら「活力」だったのでストレートに「バイタリティ」と名付けました。

Q:今回、作品イメージは田中さんで制作はカモタさん?
A:最初から利用者様に制作意図を考えてもらうのもありですが、まだその段階ではないと考えてイメージは私、キャンバスが大きかったので制作は6名にお任せしました。

Q:2年連続優秀賞受賞のお気持ちは?
A:正直、去年も今年も賞をいただけるとは思っていませんでしたが、やってみた満足度と利用者様の反応は、これまでの積み重ねもあり去年以上の熱意を感じたので、2年目の今年の方が良かったと思います。また制作にあたり前回は利用者様にプレッシャーをかけないようにしてきましたが、今回は先に「公募展に出す素敵な作品を作りましょう。そして、皆で観に行きましょう!」と言う大きな目標を立てました。それがあったので皆の意欲が作品にも反映されたと思います。

Q:今後のアート活動は?
A:春陽苑で臨床美術を始めたきっかけは、認知症予防に効果があると言われたからです。ですが、1年間やってみて臨床美術にこだわらずアート活動そのものが、利用者様に与えるプラスの影響は大きなと実感しました。だから、絵だけでなくこだわらず書道も含めた様々なジャンルにも挑んで行きたいです。利用者様それぞれに好きなジャンルがあるので選択の幅が広がり、今まで参加できなかった方々も入りやすくなると思うからです。

Q:今日はありがとうございました。

*インタビューに同席した初代カモタオユコ(ユ)さんのコメント
今回も田中さんのご指導で6名のメンバー全員はドキドキしながら楽しく描き、乾かしてある作品「バイタリティ」を観ると心がワクワクしました。そして会場で観た自分の作品はピカピカしていて嬉しかったし、帰りに寄った明治記念館でいただいたケーキも美味しかったです。なんにしても前回は何をするのか全くわからなかったけれど、今回は最初から目標があり明るい作品ができて嬉しかったです。だから、これからもアートは続けて行きたいです。


(2024/07/10 取材撮影 関幸貴)


プロフィール

田中裕一(たなかひろかず)さん
◆田中裕一(たなかひろかず)さん
介護福祉士 臨床美術士
埼玉県出身
江戸川学園おおたかの森専門学校(旧:江戸川大学総合福祉専門学校)卒業
現職:介護老人保健施設 春陽苑 統括主任介護士
*記事中に出てくる「臨床美術」とは
臨床美術は、絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、高齢者の介護予防や認知症の予防・症状改善、働く人のストレス緩和、子どもの感性教育などに効果が期待できる芸術療法(アートセラピー)のひとつです。
(特定非営利活動法人日本臨床美術協会HPより)
 
応募作品「二人で描く線と色の抽象画」と「バイタリティ」 春陽苑 田中さんとY・Rさん(春陽苑ロビー) 田中さんの手

 

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