アトリエ 訪問

 


ミーツギャラリーも協賛する第1回「健康をめざすアート公募展」最優秀受賞者/吉澤幸子さんに受賞1年後の気持ちを語っていただきました。

吉澤幸子(よしざわさちこ)さん

制作中の作品と共に

☆吉澤幸子さんの…


好きな作家:いま私が夢中なのは、戦後ドイツを代表する画家アンゼルム・キーファーです。現在も東京の北青山で個展開催中ですが、初めて知ったのは2年前でした。以後、多木浩二著「シジフォスの笑い-アンセルム・キーファー」は読み返すたびに新発見があるので、手元から離せません。彼の作品は歴史、戦争、神話、聖書などをテーマに制作、観る側に「人の存在」「生死の意味」を真摯に問うているかのようです。中でも私が強く衝撃を受けた作品は、鉄製ベッド14台を置きフランス革命の時代に殉死した女性を表現したインスタレーション「革命の女たち」です。当時は女性の立場は弱く、フランス革命時に活動しながらも名を残すことができなかった女性たちの存在と、女性が酷い扱いを受けていた歴史的事実を忘れさせないようにする制作意図が強く感じられます。そのベッドの中の窪みに水が溜まっているのですが、これは子宮を表現、そしてベッドの奥の壁には枯れたひまわりと水たまりから去って行く男の後姿の写真。この光景で「人間の不条理」「あらゆる男女間の問題」が提起されているのを私は感じました。彼の意思を繋いで私も2022年の個展用にベッドを1台作りました。かなり重かったですが、その感覚を実感できたからこそ、自分なりの制作を続けて行きたいと思い至りました。

制作活動:私は美大を卒業していますが、美術史専攻でした。また子どもの頃から絵が下手だったので、まさか自分が描くとは思ってもいませんでした。それが、今から5年前の2019年、アーティストの内海信彦先生に出会い、先生の絵画研究会に「あなたのエネルギーを作品にしてみては!」とお誘いいただいたのがきっかけで制作を開始。まず新人展のため、好きな青色を使い図画用紙に青い墨汁を塗って自分の裸の胸を押し当てた作品を提出したら、「いいじゃない」と先生の返事。男性の観る対象ではなく、女性が持っている胸を素直に表現したかった私にしたら「これでいいんだ!」と妙に納得。ただ、その後の一言「これを60枚貼って!」と言われて驚きましたが、私は8×8計64枚制作して壁一面に貼りました。後で知ったのですが、内海先生は新人展の時には皆にそうした課題を与える傾向があるようです。それは先生の恩師であるアーティスト吉田克朗さんの影響もあるのかなと思いました。
新人展後、グループ展に何度か参加していたらGallery Kのオーナー宇留野隆雄さんから「吉澤さん、個展をしませんか」と声が掛かり、2021年に第1回個展「青い海から青い空へ」を開催、以後毎年7月第1週に個展をGallery Kさせていただくことになりました。それもあって時間が許す限り、ほぼ毎週Gallery Kへ通い、展覧会を観て作者から制作意図を聴くようにしています。これが刺激になり制作意欲が増します。加えて制作中は、作品を部屋に干して何週間も眺め、上からイメージが降りてきた時に次の作業を行い、自分の気持ちのままに仕上げています。こんな感じで私は制作発表共にに恵まれた環境にいますが、内海先生と宇留野さんには感謝しかありません。

受賞後1年を経た感想:最優秀賞を受賞した時、自分自身の思いは自分でわかっていたけれど、それをちゃんと受け取ってくれた方がいたのはとても嬉しかったです。とにかく私の思いが人様に伝わったことに凄く感動しました。また評価してもらったお陰で一気に自分自身の制作の方向性が見えた気がし、自信が持てました。そして1年を経て分かったことは絵に対しての自分の可能性です。これからは今までに制作した平凡で静かな作品に新たなエッセンスを加え、もっと自分の意思を強く出した作品にしたいと思っています。そのために最近は販売量の少なくなった墨汁をかなり確保しました(笑)。

(2024/06/04 取材撮影 関幸貴)


プロフィール

吉澤幸子(よしざわさちこ)さん
◆吉澤幸子(よしざわさちこ)さん
アーティスト
1947:東京生まれ
1968:トキワ松女子美術短大(現:横浜美術大学)美学美術史科 卒業
2021:初個展~青い海から、青い空へ~を京橋ギャラリィKで開催 以後毎年開催
2023:第1回「健康をめざすアート公募展」作品「火傷」で最優秀賞受賞
2024:「健康をめざすアート公募展」2023年度最優秀受賞記念 吉澤幸子 個展
~時の流れ~をACTで開催
2024:第21回花まつり「癒し」に出展 ミーツギャラリー 

- 吉澤幸子展 ふるさと - のお知らせ
会期:2024年7月1日(月)~7月6日(土)
時間:11:30~18:30 *土曜日 ~17:00
会場:Gallery K ギャラリィK
所在地:東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
Tel/Fax:03-3563-4578
http://galleryk.la.coocan.jp
 
多木浩二著「シジフォスの笑い-アンセルム・キーファー」 ACT個展会場 受賞作品「火傷」と共に 吉澤幸子展ふるさとDM

 

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