アトリエ 訪問

 


岐阜県中津川市加子母にある芝居小屋「かしも明治座」での成田淑恵絵画展「沸き立つ生命」が始まる4日前、地元/恵那市で制作を続ける心情と今回のユニークな会場で行う絵画展について、成田さんに語っていただきました。

成田淑恵(なりたよしえ)さん

成田淑恵(なりたよしえ)さん

☆成田淑恵さんの…

地元で描き続ける心情:うちは祖父の代から夜には「ホーホー」と梟が鳴き、昼には木々の間からカモシカがひょっこり姿を見せる自然豊かな岐阜県恵那市で全室離れ部屋の「恵那はなれの宿」を営んでいます。そうした環境だから、私が保育園年長さんの頃にはクラス全員でザリガニ釣りをしにうちに来たこともありました。そこで育った私は小学校時代から算数や国語より図工が得意、高校卒業後には美術系の学校に進みたかったのですが、諸事情で叶いませんでした。でも、画家への道は諦めず、19歳から中津川市の洋画家/故瀧川英明先生主宰のアトリエに週2回10年通い、その間の5年間は名古屋でアパレル関係の仕事をしながら中津川に通い続けました。でも結局、都会の喧騒に私は馴染めず、母が体調を崩したのを機に恵那に戻り、家業の宿を手伝うようになりました。
そして、いつしか昼は仕事の合間、夜は寝る前に描いています。もともと私は怠けやすい性格なので、このリズムは悪くありません。逆にこうした生活環境だからこそ、めりはりがあり、私自身はゆったりとした気持ちで描くことができると思っています。また、ここは自然がとても近いので大雨による災害や地球温暖化を肌で感じ、その怖さと毎日の普通の暮らしの大切さを日々学んでいる気がします。あと、そうした視点とは別に家の外へ一歩出るだけで、ここには絵のお手本になるものや勉強になるものが揃っているのが素敵です。例えば、枯葉を一枚一枚見ても表情が違うのが分かり嬉しくなります。こんな感じで新たな発見することが多く、動植物を観て描くの私は、恵那じゃないと駄目かなと今は思っています(笑)。

「かしも明治座」での絵画展:「かしも明治座」からお話があったのは、昨年3月のことでした。会場がこれまでの白い壁のあるギャラリーや美術館と全く違うので展示する作品の制作期間や相手側と私のスケジュールを調整してこの時期に決まりました。そして、このお話があるまで、ほとんど知らなかった中津川市加子母(かしも)のことを調べてみると、明治座だけでなく、水木しげるさんが描いた妖怪「岩魚坊主」や奇祭「なめくじ祭り」もあるユニークな地域だということが分かり、多くの地元の方々にも私の絵を観てもらいたくなりました。加えて、私は自分の絵を観てもらった時に笑顔になったり、和んでもらえれば良いなと常々思っているので、それも考えて展示作品を構成しました。だから、展示前は不安いっぱいでドキドキでしたが、作品展示後の気分は一気にワクワクになりました(笑)。
観ていただく私の作品テーマは「生命力」です。自分もですが、人はいつ死ぬか分かりません。だから、普通に生活しているのは当たり前だ考えず、日々を大切に過ごして行かなければならないと思います。そして人生色々ですが、困難を乗り越えて、前を向いて歩いて行くことで、青空が見えるんじゃないかとと言う想いを込めると同時に明治座は古い建物なので墨の絵があると締まるだろうな思って十二支を描いた大きな新作「雲外蒼天(縦182㎝×横760㎝)」を舞台の真ん中に展示しました。「雲外蒼天」は生まれて初めて墨を主にして描きましたが、舞台に置くと意外に小さかったのが実感です。でも、反省も含めてこうした作品発表の機会に恵まれた私はとても幸せだと思っています。

☆2024年4月23日から5月23日まで岐阜県中津川市にある芝居小屋「かしも明治座」で開催された - 成田淑恵絵画展「沸き立つ命」- は、多く来場者に加え地元小学生の社会科見学も2回もあり、たくさんの笑顔と歓声を生み、無事に会期を終えました。

取材協力:「恵那はなれの宿」 岐阜県恵那市大井町1685 TEL:0573-25-2022

(2024/04/19 取材撮影 関幸貴)


プロフィール

成田淑恵(なりたよしえ)さん
◆成田淑恵(なりたよしえ)さん
画家。
1983:岐阜県生まれ
2001:岐阜県恵那農業高等学校園芸科 卒業
2002:洋画家 故 瀧川英明氏に師事
◇主な個展
2017:「Callenge Wall7」軽井沢ニューアートミュージアム
2018:「VOICE」Gallery Q 東京・銀座
2021:「生命の讃歌」GalleryQ 東京・銀座
2023:成田淑恵 絵画展 恵那文化センター
◇主なグループ展
2018:「羅針盤セレクション」アートスペース羅針盤 東京  
2019:「国展」新国立美術館 東京
2021:「国展」愛知県美術館ギャラリー
2022:「アートブルーム3」 ミーツギャラリー 東京・銀座
2023: Four Diamonds 美の起源 東京・銀座
2024:「国展」新国立美術館 東京
◇主な受賞歴
2008:「上野の森美術館大賞展」賞候補
2016:「上野の森美術大賞展」優秀賞ニッポン放送賞
2017:「昭和会展」優秀賞 「TYK絵画大賞展」大賞
2021:「国展」国画賞
2024:「国展」国画賞
 
恵那はなれの宿 愛用の筆 作品「雲外蒼天(縦182㎝×横760㎝)」 かしも明治座で

 

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