アトリエ 訪問

 


2023年3月上旬、高尾のアトリエでコロナ禍の制作活動について、彫刻家の吉村サカオさんに語っていただきました。

吉村(ヨシムラ)サカオさん

吉村サカオさん

☆吉村サカオさんが語る…

コロナ禍で考えたこと:2020年1月から始まったコロナ禍ですが、最初は多くの日本人同様、私も状況を掴めず、考えているようで考えていないモヤモヤ状態で日常を過ごしていました。それから1年位が過ぎ、自由に人にも会えず、世の中が閉鎖的な雰囲気に包まれていた頃から私は自問自答の日々を続け、作品制作をはじめ様々なことを真剣に考え、「結局モノ作りは未来を作ることだから、自分を良くしない限り周囲も変わらない。だから、自分の作品に対する考えや立場をもっともっとハッキリさせて行く」と方向性を決め、行動指針にしました。それまで展覧会に出展したコンセプトがはっきりしていない作品を終了後に直すことや、全く違う作品に作り変えたこともありました。だから、自作品に関しては、これからもそうしたことが無いとは言いませんが、依頼された場合は、与えられたイメージをそのまま作るのではなく、内容を咀嚼し、自分なりに意図を見極めたうえで制作に臨んでいます。また、私にとって「アート」は人に力を与える存在、「観ている人が作品を通して自分を観ていることになる」と考えているので、精神的にはエンジンを吹かし過ぎないニュートラルな状態にして制作をしています。

コロナ禍の制作:以前からお付き合いのある私の地元/東京都品川区二葉にある蛇窪(上神明天祖)神社から2021年から22年にかけて、境内にある白蛇弁財天社と宝密稲荷社の新しい白蛇と狐の制作等の依頼を受けました。それまで似たようなケースはありましたが、中間にプロデューサー的な存在がいて、その方の意図に沿って作品制作をするケースがほとんどだったのです。でも、今回は依頼主から直接だったので最初の打ち合わせから最後の設置まで様々な段階を一緒に経ることができたのは良い経験でした。実際、初期の打ち合わせで、こちらが考えていることを言葉で語っても真意が通じないことが分かり、次の時に私は蛇、妻の貴子は狐の模型を作って打ち合わせに持参、具体的なカタチを見せることによって事はスムーズに進むことを肌で知りました。また、古い蛇と狐の像をどうするかと皆で話し合いを時、私の「古いのも残すべき」の言葉が受け入れられ、修復された蛇と狐は新たなポジションを得て再生。結果、神社内の見所は増え、参拝客も楽しんでいるとか。これが作るだけでなく、彫刻家として最初から企画に関与できた証だと思います。やはり、自分の考えをはっきりするのは大事なことですね。

彫刻の魅力:彫刻だけじゃなく、私は他のアート作品を観るのが好きです。そして、私にとってモノ作りは「自分を考えるための通過点」であり、アートは「自分は何なのか?」を問うための存在だと思います。あと分かりにくいかもしれませんが、彫刻って見えているモノではなく、ひょっとして裏に隠れている見えないモノを表現しているんじゃないかと思ったりします。それが彫刻の魅力かもしれません(笑)。

*2023年3月8日(火)、高尾にある吉村さんのアトリエで取材しました。

◇吉村サカオ 彫刻展 
- ヒカリ・ヲ・オル - 開催概要
日程:2023年4月24日(月)~30日(日)
時間:12:00 ~ 20:00 (最終日 11:00 ~ 15:00)
会場:OギャラリーUP・S
所在地:東京都中央区銀座1-4-9 第1田村ビル 3F
電話:03-3567-7772
URL http//www4.big.or.jp/~ogallery/


(取材構成・撮影 関 幸貴 )


プロフィール

吉村サカオさん
◆吉村(ヨシムラ)サカオさん
彫刻家
1956年 東京都品川区生まれ
1982年 多摩美術大学卒業
1984年 多摩美術大学大学院修了
同年  第9回神戸須磨離宮公園現代
    彫刻展エスキース出品
 〃  個展開催 アートギャラリー環
    (日本橋室町)
以後、各地で作品発表
パブリックコレクション多数 
*貴子夫人も彫刻家  
http://y-sakao.com
 
作品制作用の機械 修復中の福禄寿と吉村作品 白蛇弁財天社 白蛇弁財天社にある吉村作品

 

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