アトリエ 訪問

小雨降る10月下旬、鎌倉のギャラリージタン館で
加藤力之輔さんにコロナ禍の生活を語っていただきました…

加藤力之輔(かとうりきのすけ)さん

加藤力之輔さん

☆加藤力之輔さんの…

コロナ禍での日常生活:現在、私は自宅で描いているので外へ出て行くことが少ないし、住んでいるのが木々に囲まれた京都市東山区の泉涌寺なので、日常的にも人の往来が少なく、コロナ禍前とあまり変化は見られません。とは言っても、以前は年3ヶ月はスペインに戻っていましたが、ここ2年半から3年は帰れていません。こんなに長く私が、日本にいるのは1972年にスペインへ渡って以来初めてのこと。ただ昔と違い、高い国際電話料金を考えずに、家族とはLINEで顔を見ながらコミュニケーションがとれているので、お互いに安心はしています(笑)。あと京都の自宅にテレビがなく、コロナの情報はクラシック音楽の合間にラジオで聴いているので、私自身は割に冷静に対応していると思います。それに2度のワクチンも終えているので、やはりコロナ禍でも日常生活には大きな変化は見られませんね。


コロナ禍での制作活動:まず困ったのは、計画していた個展のスケジュールが大幅にズレたことです。2021年春オープンした横浜のGallery KASEで、私の作品を1年間通して展示する予定でしたがコロナ禍で延期となり、やっとPartⅢがこの11月中旬から始まり、PartⅣは12月初旬から開催することが決まりました。また東京オリンピックと緊急事態宣言下の夏、ここジタン館で個展を行いましたが、状況的に周囲に呼び掛けができなかったことからオーナーの荒井緋美さんの心配りで、10月下旬から11月かけ、新作に加えて展示の配置を替え今年2度目の個展を開催できたのは何よりでした。荒井さんには心から感謝しています。
制作面でも、約2年前に荒井さんの勧めで描き始めた花のシリーズに手応えを感じています。花を大きく描いたことはありましたが、小さいのは初めて。描くのに木炭とパステルを使うのですが、目が悪くなったこともあり、自分で確認する意味でも強く大胆に描いているので素描の技術も活き、ボカすとか影の付け方とかはティツアーノの模写時代に学んだのが功を奏して、かなり花がイキイキしているので私自身も気に入っています。
またコロナ禍の影響で時間ができたこともあり、40年以上前からの自作品を見直し、未熟だと思う点を加筆修正して仕上げています。そのひとつが「ルイサ」ですが、自作キャンバスに昔の画材と技法で描いているので、いま見ても退色せず美しいままです。ただ全ての作品に修正を加えるのではなく、中には若い頃の自分自身がキッチリ描いて作品もあり、それを観た時には思わず微笑んでしまいます(笑)。



(構成・撮影 関 幸貴)

 



プロフィール

加藤力之輔さん
◇加藤力之輔(かとうりきのすけ)さん
画家。
1944年横浜市生まれ。1972年からスペイン国立プラド美術館で4年間〈ティツアーノ〉を模写研究。マドリードの美術研究所で人体デッサンの修練でモノの見方を学び続ける。 スペイン、日本で作品発表。横浜市民ギャラリー、印象社ギャラリー、文藝春秋画廊、小川美術館(東京)、同時代ギャラリー(京都)、ギャラリージタン館(鎌倉)等。 2004年より覚園寺(鎌倉)・新善光寺(京都)・梅上山光明寺(東京)で「異文化空間展」開催。NHK日曜美術館等に出演。現在、京都在住。
 
ジタン館の様子 風景画と共に 新作「花シリーズ」 加筆修正された作品「ルイサ」

 

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