アトリエ　訪問

飯塚悠太（いいづかゆうた）さん

☆飯塚悠太さんの…
これまでコレカラ：
現時点でインタビューテーマの「これまでコレカラ」について僕が語るのは、どうも無理があるのでコロナ禍の作品制作について、思い出すままにお伝えします。

◇SNSの作品発表はレシートから大学ノートへ
マンション管理警備の仕事が深夜になるので時間的に余裕ができると、以前は喫煙がてらに入った喫茶店やコンビニのレシートに「自分の手」を書きfacebook等にアップするのがルーティンでした。でも、コロナ禍で店に入り辛くなり、レシートも手元に少なくなったので、4月頃からは大学ノートに絵を描くようになりました。何故ノートかと言えば、かつて英語を勉強するため買ったものをいつの間にか使わなくなり、「もったいない」という思いで描き始めました。そして、ノートのテーマは毎朝入る新聞の折り込みチラシの画像で「老人ホーム」とか決め、それをイメージしながら描いています。朝にならないと何を描くのわからないのが刺激になります。その作品は8月からインスタに投稿し始めました。

◇展覧会のこと
今春、大阪で催された第25回記念アートブームコンクールに作品を応募、幸い作品「フェ」でターナー色彩賞を受賞、作品「Yシャツはささいなことで汚れて使い物にならなくなる」は入選したのですが、コロナ禍で展覧会はなくなり、大阪へも行けず残念な思いをしました。また、数ヶ月前に現代美術館に行った時は体温検査をしたりアルコール消毒しなければいけなくなり、新たな日常を実感。加えて、出身校多摩美の学祭も完全にデジタルに移行して開催され、油画科とか日本画科とかネット上でバーチャルで開かれていて、ページに飛ぶと科ごとに展示が観られたけれど、画像が並んだいるだけで見辛かった。やはり作品の大小問わず、同じ大きさで展示されるネットは実物とは違います。ただ、それを観て自分のホームページもなんとかしないといけないなと少し反省しました。

◇ギター購入
今は部屋の片隅に置かれているけれど、コロナで非常事態宣言が出た4月、エレキギターを入手しました。購入理由は二つ、状況が悪くなり家から出られなくなったり、もし感染して2週間施設に収容されたとしても生音でも大丈夫なエレキギターがあれば時間が潰せると思ったからです。そして、何故ギターかと言えば、中学生の頃には作詞作曲して真剣にアコースティックギターを弾き、親しんでいたから。ギター購入後、しばらく毎日練習し、このまま続ければそれなりになると思っていたけれど、それは1ヶ月ぐらいしか続きませんでした。でも、お陰で絵が描けるようになりました（笑）。

◇クリームソーダを描く
コロナ禍の影響もあったし、本当の理由は分からないけれど、全く絵が描けない時期がありました。でも、エレキギターのお陰で、また描けるようになり良かったです。で、今は女の子の絵からは遠ざかりクリームソーダを描いています。何故かと言われても説明できません。ただ夏になるとクリームソーダが恋しく、去年は「絵に描いたようなクリークソーダが飲みたい」と思い、あちこちの喫茶店を下調べしたけれど頼む勇気がなくて行けなかったけれど、今年は頼めました。これも好きなテーマを描くためのワンステップかもしれません。とにかく油絵は乾くまでの時間がかかり、その間ずっと考えることできるので制作に臨むのに2つのタイプがあると思っています。まず最初からテーマをしっかり決めてキャンバスに向かう人、あと過ぎる時間の中で考え、新たなイメージが沸き描き加える人。僕は後者のようで、描いているのはとにかく面白いですが、なかなかうまく行かない。絵を極めるって大変だと思う今日この頃です。

（構成・撮影　関 幸貴）