アトリエ 訪問

2020年2月初旬、JR桜木町駅改札口で北村泰弘さんと会い、
裏通りのカフェで好きな作家とこだわりについて語っていただきました。

北村泰弘(キタムラヤスヒロ)さん

北村泰弘さん、横浜・大岡川の下流で…

☆北村さんの…
好きな作家 :

好きな写真家はいずれもモノクロームの印象が強い。海外ならユージン・スミスやロバート・フランク、日本では東松照明、高梨豊、森山大道、そして一押しはスナップの名手と言われた木村伊兵衛。俺らの若い頃は土門拳と木村伊兵衛が写真界の双璧でコマーシャル系は前者、エディトリアル系は木村伊兵衛支持が多かったな。
初めて木村作品を見たのは大阪にいて広告写真を始めた20歳ぐらいの頃、当時は重森弘淹ら優秀な写真評論家もいて日本写真の興隆期、写真展ではなく確かアサヒカメラの様な写真雑誌だったと思う。でも木村さんの全作品が好みというのではなく、俺が強く惹かれるのは彼自身が気配を消し、誰にも見えない状態で時代と共に風俗や人々を、さり気なく撮った一連のスナップ作品群。それらを見ると何気ないシーンで実に簡単そうに撮れると思うけれど、自分で同じ様にやってみるとかなり難しいって分かるんだ。だからこそ心底スナップ撮影は面白く、スチールカメラ以外のテクノロジーや技術では絶対にできないと分かり、スナップが写真撮影の王道であり醍醐味なんじゃないかなと思うよ。

こだわり :
男性月刊誌をやっている頃の撮影は大別するとスナップとインタビューの2つ。同じ撮影をするのだけれど、方法は全く違う。インタビューでは被取材者の心理状態を考え、会話を交え写真家としての自分の存在を示し安心感を与えていたつもり。スナップでは撮る側の俺が何を考えてもしょうがないと思い、「俺らしさ」は出てこないようにしていた。結局自分らしさが出てくるのは最後の作品選択時だと思う。この意味はちょっと難しいかもしれないな。あとファインダーを見る前に撮るものを考え、スナップはできるだけ短い時間で撮ることにしていた。ただ木村伊兵衛さんとは違うマグナム系の影響もあり、ノーファインダー撮影もよくした。使うカメラは距離計連動のライカを主にレンズは広角28mmと35mm、望遠90mm3本。振り返るとアナログ時代は失敗作の中に良い作品があったりした。でも今はデジタルだから失敗も少なくなったけれど、たくさん撮るので良い写真を見逃している気がするな。これ無駄かもしれないけれど、これからの重要な視点だと思うよ。しかし、時代は変わってしまったけれど、俺の写真はモノクロームだけ。最後にひとつ愚痴を言わせてもらえば、デジタルではプロセスでカラーがどうしても存在するけれど、フィルムのように最初からモノクロームであって欲しいな(笑)。

*2020年2月11日にインタビュー

プロフィール

北村泰弘さん
写真家。
1947年:大阪生まれ A型。
1965年:地元工業高校卒業後工場勤務。
1967年:デザイン会社に転じ写真を生業にする。
1980年から横浜移り、フリーターとして働きながら作品撮り。
1982年から男性月刊誌を中心にフリーランスの写真家として活動、現在に至る。
得意分野はモノクロームによる男性やスナップ写真。
http://yokohama.hippy.jp/phtk/

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