アトリエ 訪問

10月初旬、日本橋駅から歩いて5~6分のビルにあるリトグラフラボ・ツクハエに玉征夫さんを訪ね、好きな作家、こだわりについて語っていただきました。

玉征夫(タマイクオ)さん

玉征夫さん、リトグラフラボ・ツクハエで

☆玉さんの…
好きな作家 :

印象派は別にして、ジャコメッティ、サイ・トゥオンブリ、ヨーゼフ・ボイス、キキ・スミス、日本なら小畠廣志(コバタケヒロシ)、発想がとてもユニークな若林奮(ワカバヤシイサム)、絵とは一味違う三次元、彫刻に関係した作家が好きです。実は小畠さんが50歳で僕が30歳ぐらいだった頃、ふたりは美学校でリトグラフを学び、共に特待生になりました(笑)。そして偶然ですが、小畠さんと東京芸大で同級生だったのが若林さん。その縁もあり、小畠さん没後にスタジオで行われた若林さんの講演を聴くことができました。ただ講演後に彼と酒を酌み交わす機会があったのですが、個人的事情で飲めなかったのは残念でした。こうして思い返すと、僕にとって最も気になる作家は若林奮かもしれません。最初に彼の木彫作品「ザ・フライ」を見た時は衝撃的だったし、東京国近代美術館にある作品「振動尺」は表には見えない所に意味があり、鑑賞者の想像力を試しているかの様な難解な表現に惹かれました。また1970年代前半には文化庁芸術家在外研究員としてパリ滞在、エジプト、イギリス、スペインを来訪。帰国後、ドローイングをずいぶんやるようになったのですが、これらピラミット等を描いた作品も秀逸で独特の存在感を示していました。彼は若い頃、工業デザイナーとしても活動していたし、お兄さんが詩人だったので、その影響もあったのかもしれません。加えて環境問題にも目を向け、問題現場の石や木を利用した作品も発表していました。常に自分の思いを作品に委ねていた姿勢には感銘を受けますね。

こだわり :
これまで若い頃は独学で油絵を描き、1960年代に見たポーランドのポスター展にインパクトを受けて70年代にはリトグラフに挑み、そこから生まれたイメージをアクリルで描く様なミニマムな表現をしていましたが、1999年から油絵に戻り2000年から現在の様なスタイルになっています。そして、2018年暮れから庭の楠、エゴノキ、姫りんごを材料に木彫を開始。2019年5月から「木彫習作」として絵と一緒に発表し始めましたが、彫るために木の性格を見極めるなど覚えることは多々あります。ここまで時代時代で様々なことを学び、そのつど自分りの答えを見つけ、描いてきましたが、最近わかったことは、「人生は短いな」ってこと(笑)。だからこそ、これからも自分の思いを込め制作し続けて行きたいですね。

*2019年10月8日インタビュー

プロフィール

玉征夫さん
アーティスト
1944 岐阜県高山市に生まれる
<主な個展>
1982〜2012 画廊春秋(東京)、村松画廊(東京)、真木画廊(東京)、Atelier Meidsem(パリ)、J2GALLERY(東京)他
1991〜1998 ギャラリー宏地(東京)
2003〜2019 SPC GALLERY(東京)
<主なグループ展>
1993〜1998 DRAWINGS ギャラリー宏地(東京)
2012 画廊の系譜「浅川コレクションと1960〜80年代日本の美術」足利市立美術館(足利)
2012〜2016 HOLONIC「個と全体の調和を図る」GALLERY UNICORN(川越)
2016 連画のいざない 足利市立美術館特別展示室(足利)他 
2019 「浅川コレクションの世界-創造へともなう眼」足利市立美術館
木彫作品「事変の夜」 好きな作品集  リトグラフ用プレス機  リトグラフ用インク   

 

Archive | アーカイブ

◄ BACK