アトリエ 訪問

12月中旬、銀座のミーツギャラリーで刀根千賀子さんに会い、これまでの絵との関わりを語っていただきました…

刀根千賀子(とねちかこ)さん

刀根千賀子さん 銀座のミーツギャラリーで

☆刀根千賀子さんの
好きな作家 :

これまでたくさんの絵を観てきました。 その中で好きな作家をあげるとしたら、ルネサンス期の「ビーナスの誕生」のボッティチェリ、浮世絵の鈴木春信です。 美術部だった高校時代はモディリアニの様な絵を描きたかったし、その頃は美大進学も考えましたが、将来が限定されそうな気がしたので応用の効く同志社大学文学部に進みました。 とは言っても専攻は「美学芸術学」、入ったクラブも2018年で創部105年を迎えた「クラマ画会」だったので、定期的な展覧会もあり、絵を描くことから離れたことはありません。 加えて、まだ当時はあまり知られていない「伊藤若冲」を研究している友人もいた大学生活だったので、絵に関しての情報や刺激は日常的に多々ありました。 ですから、どちらかというと日本の古いもの好きな私の興味の対象は、個人の作家より「大和絵」に向かい、中でも平安時代末期の二つの絵巻物「信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)」と「伴大納言絵詞(ばんだいなごんえことば、とものだいなごんえことば)」には強く心惹かれ、絵巻物を卒論にしてしまいました。 絵巻物は、今でいうアニメーションとか漫画にあたり、人の姿や庶民生活が活き活き描かれ、また霞霞で場面を繋いでいるのも面白く、とてもユーモラスな場面があります。 私はそうした絵巻の世界に入り込むのが好きで、描かれている少し静かな色合いや内容から、なんらかの影響を受けているかもしれません。 とにかく絵巻物も含めて「大和絵」は柔らかくて可愛らしく、想像力やインスピレーションを沸き立たせてくれるのが魅力です。

こだわり :
私が使っている画材はアクリル絵具、筆がすごく好きで使い込み、それを用いて下に明るい色、その上に暗い色、さらに明るい色と何度も色を重ねて描くことが多いです。 結果、考えていなかった色の重なりで複雑な色合いを絵に出すことになり、独特な雰囲気になります。 私にとっては、その筆と絵の具によって織りなされる偶然性が大切です。 そして、内容的には背景は抽象にし、そこに具象の猫や女性、日常的な光景を描くことが多いです。 その絵を観て想像を膨らませ、人それぞれの捉え方でイメージを育んでくれたら嬉しい。 先日、テーブルに着いたままうたた寝をしている娘の幼い頃を描いた作品をSNSにアップしたところ、あるfacebook友だちが、「これは私!」と。 絵に今の自分の姿を重ねたという友の言葉に、私はその絵に年齢や状況を超えた普遍的な人の姿を感じ取ってもらえたと嬉しくなりました。 観る人によって絵が色々なイメージを紡いでくれるのは、本当に楽しいことだと思いました。 また、その感覚が、私が「大和絵」を楽しむ意識と近いのであれば言うことはありません(笑)。

プロフィール

ポートレート
画家。
1956年4月24日、三重県松阪市出身、牡牛座、A型。 同志社大学文学部(美学芸術学専攻)卒業 *在学中「クラマ画会」に所属。 セツ・モードセミナー卒業。 KSアーティストクラブ会員。 東京クラマ画会主宰。 個展開催およびグループ展参加は多数。 用美社より画集「La Vie」出版。

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◇展覧会情報

Take The J Train ~J列車で行こう!~ 大野温子・刀根千賀子 二人展 2019年1月4日(金)~1月31日(木)  会場:JAZZ SPOT J
「線と展」展 2月11日(月)~17日(日) 会場:銀座 ギャラリーあづま
立教 同志社合同OB OG展 6月12日(水)~16日(日)
KSアーティストクラブ展 6月17日(月)~23日(日) 会場:銀座 幸伸ギャラリー
東京クラマ画会 8月4日(日)〜8月10日(土) 会場:東京交通会館
日比谷の森展 8月30日(金)~9月4日(水) 会場:ギャラリー日比谷

 

作品 愛用の筆 「日本の美術」No.297より「吉備入唐図」 刀根千賀子画集 La vie

(構成・撮影 関 幸貴)